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製造業における挟まれ・巻き込まれ事故

製造業の労災発生頻度・部位

製造業は,すべての業種の中で労働災害による休業4日以上の死傷者数(以下「死傷者数」という)が最も多い業種です。
令和4年労働災害発生状況の分析(厚生労働省)によると,
令和4年度の労災事故死傷者数は製造業が26,694名と1位で,2位の陸上貨物運送事業の16,580名を大きく上回っています。

 

この製造業の労災事故の類型別では,「挟まれ・巻き込まれ」が最も多く6,416名です。
この「挟まれ・巻き込まれ」事故の多くは動力機械によって起き,「挟まれ・巻き込まれ」部位として最も多いのは「手」です。
「足」には安全靴が普及していますが,「手」にはこのような保護具がないこと,
また,「手」は無意識に動かしてしまうことが原因とされています。

 

労災事故に遭った場合の対処法

労災事故に遭った場合,労働者又はその遺族(以下「労働者等」という)は,
民法上の損害賠償請求や労災補償制度に基づく労災事故によって被った損害の補償(賠償)を求めることができます。

 

労災補償制度は,民法上の損害賠償請求に比べて,次の特徴があります。

⑴ 無過失責任

民法上の請求をするには,使用者の過失が要件となり,
また,労働者の過失も考慮され過失相殺もなされる可能性がありますが,
労災では,使用者の過失は考慮されず,過失相殺もされません。

 

⑵補償の限度

労災では,物損及び慰謝料は補償の対象外ですが,民法上の請求では,これらの制限はありません。

 

⑶定型的補償

労災では,補償の迅速な実施のため,一定の基準に従い,定型的な給付が行われますので,
労働者の損害すべてが補償の対象になるものではありません。
このため,労働者等は,労災で補償の対象とならない損害について,使用者の民法上の請求を検討することになります。

 

労災補償制度

労災の請求があると,労基署の調査官は,労災認定をすべきか否か,
給付額をいくらにするか等の調査をし,労基署長が支給,不支給の決定を行います。

 

この処理期間について,厚労省のパンフレットでは,1か月~4か月の範囲と定められています。
ただ,実際の処理期間は,具体的な事案によることから,調査の進捗状況を問合せることが必要です。

 

また,労災認定されるためには,その事故が「業務災害」であることが必要です。
業務災害と認められるためには,「業務遂行性」と「業務起因性」の双方が必要となります。

 

業務遂行性とは,「労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態」をいいます。

この業務遂行性は,「作業準備中,中断中,後始末中」「休憩中」
「担当業務を超えた業務中」「就業時間外」等に起きた事故が問題となります。

 

業務起因性とは,「業務又は業務行為を含めて,
労働者が労働契約に基づき事業主の支配下になることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいます。

この業務遂行性が認められるためには,業務と傷害等との間に条件関係があることを前提として,
かつ,法的に見て労災補償を認めるのが相当とする関係があることを要するというのが実務の見解です(相当因果関係説)。

 

製造業の業務中,動力機械に手を挟まれて,手に傷害を負った場合は,「業務遂行性」「業務起因性」を充たしています。

 

民法上の損害賠償請求

この民法上の損害賠償請求の法的根拠として,不法行為責任,
労働契約上の債務不履行責任(安全配慮義務の不履行)があり,いずれを行使してもかまいません。
今回は,安全配慮義務の不履行について述べます。

 

安全配慮義務は,判例上認められたもので,
「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において,
当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの」
とされています(労働契約法5条)。

 

労働者の権利保護の法令として,労働基準法,労働安全衛生法(以下「労安法」という)等があります。
労安法は,職場での労働者の安全と健康の確保及び快適な職場環境の形成促進を目的としています。

 

労安法の「労働者の危険・・・を防止するための措置」(第四章),
「機械等・・・に関する規制」(第五章)の規定は抽象的ですが,
労働安全衛生規則(以下「労安則」という)によって詳細かつ具体的な内容が規定されており,
安全配慮義務を判断する際に重要な役割を果たしています。
ただ,労安則上の規定がなくとも安全配慮義務は認められます。

 

労安則「第2編安全基準第1章(第101条以下)」は,「機械による危険の防止」について規定しています。

例えば,第101条第1項は「事業者は,回転軸・・・等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には,
覆い・・・等を設けなければならない」と規定しています。

 

この規定により,使用者は,動力機械の回転軸で手を挟まれないように,
その部分に覆いを設けていないと安全配慮義務違反となり,労働者等に対し,損害賠償責任が発生します。

 

過失相殺,損益相殺

過失相殺

民法上の損害賠償請求は,安全配慮義務違反という過失責任ですので,
損害の発生や拡大に労働者側の過失が関係している場合は,損害の公平な分担の観点から過失相殺が行われます(民法418条)。

 

例えば,労働者が,動力機械の危険性を認識しつつ労働者自身の判断で本来求められている工程とは異なる作業をして,その機械に手を挟まれてしまったような場合に,過失相殺が認められます。

 

損益相殺

損益相殺とは,労災事故の発生により,労働者が損害を被ると同時に,
同一の事由によって労災保険等から一定の給付を得たときには,その給付額を損害賠償額から控除することをいいます。
損益相殺を行わないと損害が二重に補填される結果になり不合理だからです。

 

ただし,次のものは,損益相殺の対象になりません。

⑴ 労災保険特別給付金(休業特別支給金,傷害特別給付金等)

これらは,労働者福祉の一環として,労働者の療養生活の援助等によりその福祉の増進を図るために給付されるからです。

⑵ 将来支給される予定の労災保険年金

最高裁は,将来給付予定の労災保険年金の控除を認めていません。

⑶ 生命保険金

生命保険契約に基づいて給付される保険金は,既に払い込んだ保険料の対価の性質を有するものだからです。

 

以上

 

会社で労災にあった場合には,まず,労災事件に精通している当事務所にご相談ください。
ご相談はお電話でも,メールでもLINEのいずれかでも結構です。

この記事の最終更新日 2023年12月18日 執筆者: 弁護士 大橋昭夫

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